自分の命を預ける主治医には、経験豊富な医師に就いてもらいたいと思うのは当然の話だ。息子くらいの年齢の医師に診てもらうより、同年代のベテラン医師のほうが安心できるという人は少なくないだろう。しかし、今回のデータはそのイメージを大きく覆すものだ。米国の医療事情に詳しい医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が解説する。
「近年、米国では医師に対する患者の目が厳しくなっており、『医師の能力を測るための評価基準』を作ろうという運動が盛んです。ただし、日本と同様に米国でも医師の世界は“職人の世界”であるため、評価基準を定めること自体が難しい。
そんななかで、様々な切り口で医師の能力に関する科学的なデータを示す論文が出始めています。1月には『医師の性別によって医療技術は変化するのか』といった内容の研究も報告された。今回の津川氏の論文も一連の流れの中にあるものです」
医師の年齢と技術に着目した理由について、津川氏はブログで、
〈患者は一般的にある程度年齢の上の医師を好む傾向があると思われますが、それが本当に腕の良い医師に見てもらっていることになるのかどうかは考え直す必要がある〉
としている。そして論文中では、診療ガイドラインが医学の進歩とともに変化することによって、ベテラン医師の経験や技術が“時代遅れ”になる可能性もあると指摘している。