「六代目山口組及び神戸山口組については、情勢は複雑化・流動化しており、予断を許さない状況にある。両団体の組員等の大量検挙、突き上げ捜査の徹底による幹部の長期的な社会からの隔離、ひいては組織の壊滅を図られたい」

 その翌日に“一番槍”を取りに行ったのが、兵庫県警だった。容疑の軽重など関係なく、どこよりも先んじて検挙することが大事だったのだ。

◆まずは神戸を弱体化

 六代目山口組から神戸山口組が分裂してもうすぐ2年が経つ。さらにこの4月、神戸山口組から任侠団体山口組が分裂し、いまや山口組を名乗る団体が3つも存在するという異常な状況にある。

 この間、警察は事務所への家宅捜索や、抗争に絡む組員の摘発を強化してきた。しかし、団体トップの逮捕となれば、これまでとはレベルが違う。その中で井上組長が狙われた理由を、ジャーナリストの溝口敦氏はこう分析する。

「今回の分裂劇で、神戸山口組が弱体化している隙を狙ったのでしょう。神戸山口組の中核団体は井上組長の出身母体である山健組ですが、その山健組からは分裂した任侠団体山口組へ3分の1以上の組員が流れた。

 その任侠団体山口組は、トップの織田絆誠氏が組長ではなく代表を名乗り、暴力団特有の階層構造を取っていないため、暴力団指定がかかりにくい。指定までに早くて半年はかかるとみられています。そうなると、警察として狙いやすいのは、弱り目の神戸山口組であり、トップの井上邦雄組長だということになる。井上組長は、山健組の組長も兼任している。トップ不在となれば、ますます山健組から任侠団体山口組に組員が流れるでしょう。警察はそこまで見越して、まずは神戸山口組を弱体化させるために井上組長逮捕に踏み切ったのではないか」

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