最終回で、涼太(東出昌大)が言い放った言葉。
「みっちゃんのことは・・・それほど」
元妻・美都(波瑠)への思いを潔く立ち斬って新たな一歩を歩み出した。一方の美都は、「涼ちゃんの愛は優しい暴力だった」。どこまでも本当のことをズバッと口にする愚かしい美都に、しかし無垢な透明感を感じた人もいるはず。いずれの人物も、「定型」をぶっ壊していました。
単に「よりを戻す二人」という安易なハッピーエンドに陥らず、予定調和という悪癖も破壊して走り切った最終回。清々しい結末。カタルシスある着地ぶりはアッパレ。
●『小さな巨人』 役者同士のぶつかり合い、炸裂するエネルギー
『小さな巨人』の最終回も大きく跳ねた。視聴率16.4%(関東地区)と自己最高値。このドラマでは「組織という巨大な化け物に立ち向かう正義とは何か」「組織を守るのか、人を守るのか」というテーマが一貫して描かれました。
最終回の見せ場は、刑事・香坂真一郎(長谷川博己)と捜査1課長・小野田義信(香川照之)とのガチンコ対決。シーンを見つめていた視聴者ならわかるはず。筋立てや犯人捜し、謎解きといった「意味」を超えて、長谷川さんと香川さんの激しい肉体のぶつかり合い、そのエネルギーがあまりにすさまじくて目が釘付け。
渾身の力を込めてぶつかりあう役者同士の姿は、ただただ視聴者が目をそらすことのできない最強の「見世物」と化していたのでした。
奇しくも、「組織対個人」は旬のテーマ。時代とも絶妙にクロス。ふと、前川前文科省事務次官の記者会見をドラマに重ねてしまった人も多いのではないでしょうか。腹をくくった時、人から噴出するエネルギーとは、コントロール不能で怖いのです。
人間洞察、予定調和の破壊、役者のぶつかり合い。いずれも味わい深かった3つの最終回。気付けばいずれもTBS系列。いや、えこひいきではなくて純粋に作品の強さや深さ、ユニークさに注目したらこの3本になってしまったのですが、ぜひ次クールの夏ドラマでは各局が一層競い合って欲しい。優れた深いドラマを見せて欲しい。大いに期待しています。