国際情報

台湾独立に賭けた男たちの熱き生き様

日本における台湾独立運動 時事通信社


「国策を論じたいので私に会いたいと人を介して蒋経国から連絡があり、二度断ったんだけど、三顧の礼って話がありますでしょ、さすがに三度目は断れなかった」

 蒋経国は、組織が骨の髄まで憎む蒋介石の後継者だ。グー・クワンミンは仲間に内緒で密かに台湾に向かった。蒋経国は国際社会での孤立を感じ、新しい台湾統治を模索していた。敵視する独立派の言葉に耳を傾ける必要に迫られるほど追い詰められていた。

 蒋経国に対し、グー・クワンミンは政党の自由化や本省・外省の区別の撤廃(*注2)などを建言した。

(*注2:第2次世界大戦前より台湾に居住する台湾人を本省人、その後に台湾に移住した大陸人を外省人と呼ぶ。近年まで、本籍欄に明記されており、差別や対立の背景になった。)

 蒋経国も黙って耳を傾けていたが、グー・クワンミンが「大陸反攻、これは痴人の夢ですよ」と言うと、座の雰囲気が一変した。

 日本語教育を受け、台北高等学校に通うエリートだったグー・クワンミンは日本語がもっとも身近な言語である。とっさに愛読する谷崎潤一郎「痴人の愛」が思い浮かび、絶望的になった大陸反攻をなお掲げる蒋政権を揶揄したのだった。

「私は可能だと信じる」。蒋経国も激しく反論し、口論になった。

 心配した蒋経国の部下があわてて部屋に入ってきた。議論の中身は知らない。グー・クワンミンはとっさに「あんたに聞くが、大陸反攻と台湾防衛、どっちが優先かね」と話を振ると、部下は即座に「台湾防衛です」と答えた。

関連キーワード

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン