2015年12月に国内5番目の重粒子線治療施設を開設した神奈川県立がんセンターの中山治彦副院長は、重粒子線治療のメリットをこう語る。
「外科手術では切除が難しいがんや、体の深いところにあるがんの治療に有効です。従来の放射線治療は正常な細胞を傷つける危険性がありますが、重粒子線治療ではその可能性が低いです。従来の放射線治療と同じく軽微なやけどなど副作用の可能性はありますが、“体を切らずにできる手術”のようなものです」
一般的に、早期がんの治療には外科手術がもっとも多く用いられるが、手術で切除できない場合に抗がん剤や放射線治療が選ばれる。重粒子線は放射線治療の一種でありながら、手術と同程度の局所効果が狙えるという。
しかも、1回の照射は数分程度。身体にメスを入れないので入院の必要がなく、外来で利用できるのが大きなメリットだ。体力に不安がある高齢者や、がん以外にも合併症のため手術ができない患者の治療も可能だ。
がんの大きさや状態にもよるが、神奈川県立がんセンターでは少ない場合で4回、疾病によってはさらに複数回の照射が行われる。