同センターでは細かい重粒子線ビームを高速で動かし、三次元的にがん病巣を塗り潰すように照射する最新の「三次元スキャニング照射」を実施。また患者の呼吸に伴う臓器の動きに合わせて照射する「呼吸同期」など、より精密にがん病巣だけに重粒子線を照射する最先端技術が用いられており、費用はいずれも回数に関係なく、「1セット」で総額約350万円(診察・検査・薬代を除く)。他の治療施設でも自己負担分は300万円前後が目安となる。
治療の対象になるがんは、頭頸部のがん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、骨軟部腫瘍など多岐にわたる。ただし、広範な転移のあるがんや白血病など血液のがん、粘膜性の臓器である胃がんなどは対象外だ。なお、手術非適応の骨肉腫など骨軟部の悪性腫瘍については2016年4月から公的医療保険が適用されている。
◆世界に先駆け日本が実用化
粒子線治療はもともと米国の技術だが、重粒子線治療は1994年に日本の放射線医学総合研究所(放医研)が世界に先駆け実用化した。
そのため重粒子線治療の技術は日本が世界の最先端にあり、世界の10施設中5施設が日本にある。これまでにおよそ1万人の患者が治療を受けた。
一方、粒子線による治療にはもう一つ、「陽子線治療」がある。近年では、女優の樹木希林や作詞家のなかにし礼がこの治療を受けたことで話題になった。こちらのほうが歴史は古く、日本では1979年に放医研が臨床試験を開始。現在、国内12施設で年間3000人が治療を受けている。