◆金融リストラ“革命前夜”
中国発のアリペイとウィーチャットペイが引き起こした「モバイル決済革命」は、これから世界中に波及するだろう。
アメリカではスクエアがスマホ・タブレット端末同士の決済を売り物にしているが、単に専用リーダーを取り付けてクレジットカードを読み取るだけなので、システム自体に新規性はない。iPhoneのアップルペイも、やはりクレジットカードを介した仕組みである。同じモバイル決済と言っても、その中身は利用者と店舗が第三者を介さずダイレクトに決済できるアリペイやウィーチャットペイとは似て非なるものだ。
日本やアメリカはクレジットカード会社や銀行などの金融機関にすっかり支配されているから、こうしたモバイル決済革命への対応が完全に遅れている。
だが、第三者が債権回収を代行したり、信用を補完したりする現在のシステムは、個人の口座に瞬時に照合して決済できるネット時代には無用の長物であり、邪魔でさえある。
今後、アリペイとウィーチャットペイは21世紀の“巨大な新銀行”になる可能性を秘めている。
なぜなら、両社はeコマースやゲームなどの決済業務を通じて、膨大な顧客データ(=信用情報)を蓄積しているからだ。顧客の信用情報は、今まで銀行などが握っていた力の源泉だが、銀行はそれを生かすことができず、すべての顧客に同じ条件で、丼勘定で対応していた。しかし、アリペイとウィーチャットペイが、デジタル化された自社のビッグデータを活用すれば、預け入れと貸し出しについて個別の金利を設定できる。