たとえば、Aさんは大金を長く預けてくれていて貸し出しもないから、通常1%の預け入れ金利を3%にする。一方、Bさんは預金が少なく、頻繁に借り入れをして支払いも遅れがちだから、通常3%の貸し出し金利を5%にする―という具合である。双方を組み合わせると、銀行は常に2%のサヤを抜けるわけだ。こうしたリスクプロフィールを集成したマトリックスを作れば、個人を対象とした金融業務では損失を出すことなく、大きな利益を生み出すことができるはずだ。

 しかも、そういうALM(アセット・ライアビリティ・マネジメント)と呼ばれるマトリックスの作成や個別の金利設定などは、AI(人工知能)やロボットが得意とする分野である。このシステムを構築したら自動的に巨大な富が転がり込み、その一方では、これまで既存の銀行やカード会社が独占して金城湯池(きんじょうとうち)になっていた預金、融資、決済などの業務が、すべて吹き飛ばされてしまうだろう。

 アリババのジャック・マー(馬雲)会長やテンセントのポニー・マー(馬化騰)CEOがそこまで見通しているかどうかはわからない。だが、私が彼らの立場なら、アリペイやウィーチャットペイを活用した新しい銀行を作って世界制覇を目指す。まずは主要国で既存の銀行を買収してモバイル決済サービスを展開するのが、最も手っ取り早い方法だ。

 それに対して、フィンテックなどの準備を始めていると豪語する従来の銀行やクレジットカード会社は強硬に反発するに違いない。それでも、この秩序破壊は、これまで誰も見たことがないようなスピードと大きさで起きるはずであり、日本もその埒外ではあり得ない。今は、その“革命前夜”なのである。

※週刊ポスト2017年8月18・25日号

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン