たとえば、Aさんは大金を長く預けてくれていて貸し出しもないから、通常1%の預け入れ金利を3%にする。一方、Bさんは預金が少なく、頻繁に借り入れをして支払いも遅れがちだから、通常3%の貸し出し金利を5%にする―という具合である。双方を組み合わせると、銀行は常に2%のサヤを抜けるわけだ。こうしたリスクプロフィールを集成したマトリックスを作れば、個人を対象とした金融業務では損失を出すことなく、大きな利益を生み出すことができるはずだ。

 しかも、そういうALM(アセット・ライアビリティ・マネジメント)と呼ばれるマトリックスの作成や個別の金利設定などは、AI(人工知能)やロボットが得意とする分野である。このシステムを構築したら自動的に巨大な富が転がり込み、その一方では、これまで既存の銀行やカード会社が独占して金城湯池(きんじょうとうち)になっていた預金、融資、決済などの業務が、すべて吹き飛ばされてしまうだろう。

 アリババのジャック・マー(馬雲)会長やテンセントのポニー・マー(馬化騰)CEOがそこまで見通しているかどうかはわからない。だが、私が彼らの立場なら、アリペイやウィーチャットペイを活用した新しい銀行を作って世界制覇を目指す。まずは主要国で既存の銀行を買収してモバイル決済サービスを展開するのが、最も手っ取り早い方法だ。

 それに対して、フィンテックなどの準備を始めていると豪語する従来の銀行やクレジットカード会社は強硬に反発するに違いない。それでも、この秩序破壊は、これまで誰も見たことがないようなスピードと大きさで起きるはずであり、日本もその埒外ではあり得ない。今は、その“革命前夜”なのである。

※週刊ポスト2017年8月18・25日号

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