昨年の選抜では、秀岳館の選手にサイン盗みと疑わしき行為が発覚。試合に勝利し、お立ち台に上がった鍛治舎は「選手たちには紛らわしいことはやってはダメと言っていたので残念に思う」と、“自分は知らなかった”という姿勢を貫いた。
今年3月には秀岳館の理事長による解任騒動も起き、本人が慌てて火消しに回る一幕もあった。極めつきは早稲田実業と対戦した5月の招待試合だ。5対1とリードした9回2死走者なしから、2番打者を敬遠し、わざわざ清宮幸太郎と勝負する。清宮や早実監督の和泉実は露骨に不快感を示していた。
この事件のあと、私は鍛治舎の姿勢を本誌(週刊ポスト)で批判した。すると、ある取材現場で日本高等学校野球連盟の関係者に呼び止められた。記事に何か問題があったのだろうかと、ドキリとした。
「よう書いてくれた。あんたの言う通り。あの人は高校野球の監督というより、社会人野球の監督。教育者でもなく、企業人です」
甲子園で3季連続ベスト4に進出しながら、いつしか鍛治舎は高校野球界で最大のヒールとなっていた。
そんな彼に対する印象がガラリと変わったのは、この6月だ。秀岳館のグラウンドで、これまでの騒動について質問をぶつけた。
正直、期待はしていなかった。お茶を濁す発言に終始すると踏んでいた。ところが、彼は本音で私の疑念にぶつかってきた。