「一大会で一人の投手が600球も投げるのは、その投手の将来を思ったら避けたほうがいい。私は複数の投手を育て、継投策を採ってきた。今大会は完投する投手が少ないですよね。そういうところは一石を投じた意味があったかな」
秀岳館の打者はファーストストライクからフルスイングし、追い込まれたら一転、ノーステップ打法に変わる。これは鍛治舎がアマチュア野球の日本代表にコーチとして帯同した当時、世界最強といわれたキューバに対抗すべく用いた策だ。
「追い込まれたら一握り短くバットを持って、センターから反対方向に身体ごとぶつけていくようにする。ノーステップだから目線がぶれず、低めのボール球に手を出さなくなる。今では作新学院も花咲徳栄も、木更津総合も取り入れている。新しい風は吹かせられた」
メールでは、鍛治舎は主に投手担当のコーチである山口を後継者に考えている様子だった。しかし、鍛治舎を熊本に呼んだ87歳になる中川静也理事長は、前任監督・久木田拡吉の復帰を考えているようだ。
「せっかく(メンバーに入っていない)2年生は秋に向けて練習させようと熊本に残してきたのに、練習の内容に関して何も報告がない。揉めて辞めるつもりはありませんが……」
最後の最後まで、鍛治舎の周りには“波風”が立っている。
※週刊ポスト2017年9月1日号