文化はどうなっただろうか。伝統文化として誰もが真っ先に思い浮かべる茶道や能楽が生まれたのは室町時代だったが、江戸時代の家元制度により大きく整備発展。しかし明治維新から暫くは幕府の保護がなくなったことで、その存続が危ぶまれる程に衰微した。
幕府が勝っていれば明治維新後ほどの急速な西洋化は起こらなかったはずだ。「道」と称される伝統文化が現代では世界の隅々にまで広がっていただろうことは、明治時代の海外での浮世絵人気を考えても容易に想像できる。いま話題の将棋も幕府の保護により発展した。これも家元制度を通じてである。将棋も現代まで家元制度が続いていれば、日本中が大注目の藤井聡太四段も大橋家や伊藤家(*3)の内弟子として棋士のキャリアをスタートさせていたかもしれない。
【*3/江戸時代にあった将棋の家元。】
想像は尽きないが、幕府がもし勝っていたとしても、違った形ではあったにせよ日本が大きく発展していたことだけは確かである。
【PROFILE】村上政俊●1983年大阪市生まれ。東京大学法学部卒。2008年4月外務省入省後、北京大学、ロンドン大学に留学し中国情勢分析などに携わる。2012年12月~2014年11月衆議院議員。現在、同志社大学嘱託講師、皇學館大学非常勤講師、桜美林大学客員研究員を務める。著書に『最後は孤立して自壊する中国 2017年習近平の中国』(石平氏との共著、ワック刊)がある。
※SAPIO2017年9月号