ライフ

がん患者がすがる「免疫療法」、医師同士は競合を詐欺師扱い

免疫療法に最後の望みを託す人は多いが…

「末期がんが消えた!」「先進的」──命の危機に瀕した進行がん患者にとって、そうした謳い文句で宣伝される「がん免疫療法」は“最後の希望”に映る。だが、高額な治療費を払う患者たちに、「有効性が立証されていない」ことが、正確に伝わっているのか。無料説明会への潜入、実際に治療を受けた患者の声からは、モラルなき実態も浮かび上がる。ジャーナリスト・岩澤倫彦氏がレポートする。

 * * *
 東京・六本木の高層ビル。免疫療法の説明会が行われるフロアにエレベーターが着くと、コンシェルジュの女性が待っていた。フロアには高級ホテル然としたプレミアムな雰囲気が漂う。説明会の講師は、国立大学の先端免疫治療学寄附講座の特任教授。約10人の患者と家族を前に、治療画像を見せながら夢と希望に溢れたエピソードを紹介する。

「この肝臓がんは、樹状細胞ワクチン(=免疫療法)で壊死して黒くなりました。この肺がん患者は、ありとあらゆる抗がん剤をやって効かなかったので、樹状細胞ワクチンを併用したら、きゅーっと、がんが小さくなったと。こういうことが、割と珍しくないのです」

 患者たちは身を乗り出してスライド画像を見つめる。説明会の終わり、特任教授は意外なことを口にした。

「“彼ら”は、うまいこと宣伝をやるんで、私は詐欺師と呼んでいます。“彼ら”は、効果が出たという画像すら偽造しますからね」

 詐欺師と揶揄された“彼ら”とは、他の免疫クリニックのこと。だが、後に別のクリニックの説明会でも全く同じセリフを聞いた。互いが互いを詐欺師と罵る異様さがある。説明会後、半数の患者が外来の予約をしていた。この免疫療法を受けるつもりらしい。費用は1クール(約3か月)200万~300万円。これを何クールも続ける患者も多い。

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン