木製バットに苦しめられたのは清宮だけではない。この夏の甲子園で1大会最多本塁打の新記録「6」を樹立し、10月26日のドラフト会議で目玉となる“打てる捕手”中村奨成(広陵)だ。
初戦にヒットは出たものの、その後は快音が聞かれず。強く木製バットを振ろうとするあまり身体が開き、外角の変化球にクルクルとバットが回った。重要なオープニングラウンドのアメリカ戦では、リードとキャッチングの不安も露呈。6回途中で交代を告げられ、その後は「DH」で出場が続いた。
「なんで自分はあそこ(捕手)に座っていないんだ」──そう思うこともあったが、中村は「まだまだ努力しなさいと神様に告げてもらった」という言葉で大会を総括した。
清宮の長い夏がようやく終わった。プロ入りか、早稲田大学への進学か。本人は「消去法で選ぶのは嫌」と話すに留めたが、将来の夢には言及した。
「海外選手は身体が大きいし球も速いしスイングも速い。こういう選手たちとやるのは楽しいし、夢がある。自分はメジャーの雰囲気がものすごく好き。将来はこっちに来て野球をやりたいな」
大学進学を薦めていると噂される両親を納得させ、かつ自身の夢に一歩近づくためには──米国の大学に進学し、将来的にはメジャーのドラフト指名を待つ。そんな第3の選択肢こそ怪物の進路には相応しいのではないか。
●取材・文/柳川悠二 撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2017年9月29日号