最大の理由は若いころから着実に経験を積んできていることだろう。ぽっと出じゃないのである。ジャニーズと時代劇の歴史は古い。1972年には当時、ジャニーズ事務所所属でデビューしたばかりの郷ひろみが大河ドラマ『新・平家物語』に出演しているし、元SMAPの香取慎吾も中居正広も、若侍役で1992年に村上弘明主演のNHK『腕に覚えあり』に出ている。
まだ十代だった香取はそこでいきなり下帯姿になる場面があり、衝撃だったとバラエティー番組で語っていた。そんな経験を経て、大河ドラマ『新選組!』では堂々の主役を務めたのだ。ブレイクする前、時間がたっぷりある新人にとって、大御所主演の作品で時代劇のイロハを学ぶのは、とてもいい機会。監督や製作者とのよき出会いもある。東山紀之も松岡も若き日に共演した時代劇スター松方弘樹を師と仰ぎ、指導を受けた身だ。
もうひとつ、彼らが時代劇で歓迎されるのは、殺陣に欠かせない身体能力やリズム感があること。歌と踊りの経験豊富な彼らは、動きを覚えるのがとても早く、スピードもある。私は殺陣師の先生が「何も教えることがない」と絶賛しているのを聞いたことがある。
そうした基礎能力に武術をプラスしているのが、岡田准一だろう。『関ヶ原』で岡田演じる石田三成は馬で疾走し、歩きながら矢を放ち、雄たけびを上げる。官僚的で嫌味な人物として描かれることの多かった三成だけに、こんな武闘派三成にはびっくりだ。岡田は次作に剣の遣い手に扮した映画『散り椿』がある。途切れることなくチョンマゲ姿になっているのもすごい。
まだまだ続くジャニーズ俳優の時代劇。16才で時代劇デビューした松岡は、京都の現場でスタッフに「お帰りなさい」と迎えられたという。金さんの横には、事務所後輩の神山智洋も新米同心役で出演。こうしてジャニーズ時代劇俳優の系譜は脈々と受け継がれていくのだ。