私の相撲観は、半分以上が北の富士の受け売りである。「NO北の富士NO相撲」と言っても過言ではない。かみ砕いてすっきりとした言葉を言ってくれる北の富士に、相撲にくわしくない私だけど楽しんでいいんだよね、とはげまされる。
北の富士を好きな理由の一つには、おしゃれさもある。和装のほどよい崩し方、何本所有しているのだろう、次々に変わるメガネ、そしてその奥のチャーミングな瞳! ふんわりしたツイードを身に着けた様には「ああ、秋が来た」と日本の四季を感じさせられる。
夏ファッションが特にいい。はだけたシャツからのぞく胸は日焼けしていて、貝をつないだネックレス、白いスポーツウォッチ。笑った歯がまた白い。まぶしすぎて、解説席が砂浜に見える。
国技館に行くとラジオ解説時の姿も見られるのだが、画面に映らないからなのであろうラフな服装が、またこなれている。ピンクとダークブルーのラガーシャツにストレートジーンズ。現役時代、石原裕次郎と股下の寸法? が一緒なのだと自慢していた北の富士。ヒップの位置がとてつもなく高く、その通りだと見惚れてしまう。
ジーンズの足元の下駄の音もスタイリッシュ。北の富士が漂わす良い香りはパルファムなのだろうか、それとも北の富士自身の体臭か。嫌味でない、しかし濃厚な香りがして腰が抜けるのですれ違いたくない。北の富士の私物を公開するスタイルブックが出版されたら私は十冊買うつもりだが、その内容(真っ赤なレザージャケットなど)を参考にできる日本人男性はまずいないだろう。
北の富士のキュートな笑顔や鮮やかな着こなしが走馬灯となってめぐり、いつまでも忘れない、あんなかっこいい人は今後出会えないと涙をぬぐった。
しかし二日分の休載ののち東京中日スポーツ『はやわざ御免』は復活、九日目はラジオ解説(自らの担当日だと思い解説席に行った八日目、陸奥親方がすでに座っていて周りに笑われて恥ずかしかったのだそうだ)、十日目にはテレビに登場した。うれしすぎて「心配して損したっつーの」とプリプリしてしまった。これからも元気でチャラい、時におとぼけさんな解説で楽しませてもらいたい。
※週刊ポスト2017年10月13・20日号