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2017.10.20 16:00  週刊ポスト

【著者に訊け】石田衣良氏 IWGP『裏切りのホワイトカード』

「ネットの情報は時に偏りが酷く、トランプみたいに愚かしいことを盛大に言い、悪目立ちさえすれば、数が正義になる世界ですから。

 マコトはその点、含羞があるというか、落語の若旦那みたいに小さな正義をこつこつ実現し、タカシともつるむわけじゃない。警察やヤクザとも対等に接し、自分が身をもって正しいと思ったことだけを信じるんです。

 それって現代の理想的な知性の在り方だと思うし、教養主義が崩れる中、知性を自力で培うしかなかった僕らの世代っぽくもあるけどね。いわばマコトはリベラルの一番いい面を持った民主主義の申し子で、なのに勉強とおふくろさんだけは怖くて苦手なんです(笑い)」

◆正義感はもっとユルくてもいい

 そして表題作も〈「数」にまつわる物語〉。総勢2千~3千人に及ぶバイトに無垢のプラスチックカードを持たせ、コンビニ等のATMで一気に預金を引き出させるこの犯罪計画を、マコトは池袋地区の動員を打診されたタカシから調査を依頼されて知った。

 実際、報酬は数分で1人10万というオイシイ話に飛びつく者は多く、障害児を抱えたシングルマザー〈ミチカ〉との結婚を夢見る大山烈風隊の〈シンジ〉は、〈キングがダメだといっても、今回はやります〉と思い詰めた表情で言った。

「実際にありましたよね、海外口座から偽造カードで預金を引っ張った特殊詐欺事件が。尤も銀行側は保険がきくし、誰の懐も痛まないんだけど、おバカな出し子の子たちだけがゾロゾロ逮捕されちゃったという。特に今の特殊詐欺は刑が重いんですよ。中には礼金ももらえないまま刑に服する子もいて、非正規とか低賃金で働く若者の惨状を考えれば、彼らも犠牲者と言っていいかもしれない」

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