東京五輪の買収疑惑が初めて報じられたのは、昨年5月だった。東京開催が決まった2013年9月のIOC総会前後の7月と10月、東京オリンピック招致委員会からシンガポールの会社に計2億3000万円が振り込まれ、このカネがパパマッサタ氏に“賄賂”として流れた疑いがある──という内容だ。前出の山田氏が言う。
「このシンガポールの会社経営者とパパマッサタ氏は非常に親しい関係だったことに加え、パパマッサタ氏がその時期にパリで高級時計など1600万円の買い物をしていたことなどが判明しています。あまりのタイミングの良さに“疑惑”が深まったのです」
もちろん、この情報はあくまで「カネの流れがあった」というだけで、それが買収工作に用いられたという根拠は示されていない。しかし、ブラジルでの逮捕から約2週間後に、世界が驚く“新証拠”が飛び出したのである。
◆マドリードを阻止する
それを報じたのは10月20日付のフランスの高級紙『ル・モンド』だった。東京開催が決まったIOC総会中に、パパマッサタ氏が父・ラミン氏に送ったメールの内容が明らかにされたのだ。
「(東京と開催都市を争っている)マドリードへ投票するようアフリカ諸国への働き掛けが全力で行なわれている。休憩時間になんとかせねばならない」