国内

孤食になった認知症母 「食べてる」と言いつつも痩せ細った

孤食により痩せ細っていく高齢者も…(イラスト/アフロ)

 認知症の母(83才)の介護にあたる本誌N記者(53才・女性)。食べることを大事にしていた母が痩せていった姿に、「孤食」への問題を思った。

 * * *
「ひとりになったけれど、食事はきちんと摂りたいと思う」

 これは4年前、母が認知症と診断され、主治医から指示されて書き始めた日記の1ページ目に記された一文。

 父の急死のショックもあっただろうが、葬儀の前後からしばらく、母は心を閉ざしたように無表情になった。半世紀以上連れ添った夫に死なれ、しかも認知症の母の心情とはいかほどか。こっそり覗のぞいた日記が「食べること」で始まっていることに、ちょっと驚いた。

 そういえば、「しっかり食べないと働けないよ」というのが昔からの母の口癖だった。そして家族3人だけなのに、いつも食卓いっぱいに料理が並んでいた。料理好きやグルメというのではない。家族が生きるための“食”を重要視していたのだ。それを思えば人生の一大事に、「食事だけはきちんと」という宣言はいかにも母らしい。

 そんな母の独居がスタートした。当時私は仕事の傍らで相続や年金、母の家計管理関係の作業に忙殺され、それを言い訳に母への気遣いを棚上げにしていたのだが、母宅を訪ねて買い物につきあうと、心痛い現実に直面した。

 一緒にスーパーを歩きながら、私が自分の家族の夕飯の支度をするとわかっていながら、決して「一緒に食べよう」とは言わない。それでいて肉や野菜の“安売り”を見つけるとわれを忘れて駆け寄り、「あら、お肉が安い! せりも旬ね、お鍋がいいわね~」と興奮。

 食材を見て家族の喜ぶ献立がひらめき、それがお得に買える至福は主婦の醍醐味だ。その気持ちはよくわかった。それなのに大量の食材をどんどんカゴに入れる母に、「ママはひとりなんだから、お総菜とかを買えば?」――そんな冷淡な言葉しか出てこない自分に凹(へこ)んだ。

 母は食の大切さを豪語するわりに運動には興味がないので、若いころから愛嬌あるぽっちゃり体形だ。

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン