益川先生は、浪花節なところもある。ノーベル賞受賞の報に際して、「(師匠の)坂田先生がノーベル賞をとれなかったのは、弟子である私たちがだらしなかったからだ」と語った。同じ年にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎氏には、最大の敬意を示し、我が事以上に喜んでいる。本物は本物を知る、ということだろう。
科学というのは、壮大な知のバトンタッチだ。先人たちの血のにじむような研究が少しずつ積み重なって、今につながっている。
一人の偉大な業績は、その人だけのものではない。過去の何人もの科学者が渡してきたバトンが、自分の手のなかで形になったにすぎないことをよく知っている。だからこそ、本物の科学者は科学を私物化しないのだ。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『検査なんか嫌いだ』『カマタノコトバ』。
※週刊ポスト2017年11月17日号