かつてGE(ゼネラル・エレクトリック)のジャック・ウェルチ元会長は、将来の幹部候補となりそうな優秀な社員に隣の課や別の部門の問題解決について意見を求めるという仕掛けを作った。これもまた「脳の筋トレ」にほかならない。
つまり“余計なお世話”を繰り返すことで脳が活性化し、経営についてより深く理解して問題解決策を導き出せるようになっていくのである。他の部署の問題を「自分には関係ない」というのではなく、自分の身に引き寄せて客観的に考え、的確な答えを出せる人材が将来の経営トップになっていく──。そういう仕掛けがあるからこそ、GEは今なお世界的な優良企業の座を維持できているのだ。
この「相手の立場になって考える」というトレーニングは非常に重要だ。同僚と居酒屋で上司の悪口や仕事のグチを言っている暇があったら、「自分が上司の立場ならどうするか」ということを考えるべきである。
私が学長を務めている「ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学」でやっている「リアルタイム・オンライン・ケーススタディ(RTOCS)」は、それを実践している。たとえば、「もし自分が赤字続きの大塚家具の社長だったらどうするか?」「安倍首相の立場なら難題山積の外交問題をどのように解決するか?」といったテーマについて解決策を考えるのだ。
そういった「脳の筋トレ」を繰り返していけば、経営についてより深く理解して、どんな問題についても的確な解決策を導き出せるようになるのである。その結果、どこへ行っても通用する人材になり、定年後も周囲からお声がかかって自分のスキルを生かした仕事に就くなど、充実した人生を送ることができるはずだ。
※週刊ポスト2017年12月1日号