そうした不法滞在者の潜伏先として考えられるのが埼玉や千葉などの大都市近郊だ。彼らの行先は都会から郊外に移っている。郊外は人口密度が低く、警官の数も少ない。警官に出くわす可能性が低くなれば、職務質問を受けて旅券を提示させられる機会も減り、捕まりにくい。
かつて不法滞在者は、大都会の人混みに紛れるように暮らすのが普通だった。だが、石原慎太郎都知事(当時)が2003年に打ち出した「浄化作戦」によって状況は一変。新宿、渋谷、池袋、六本木などで不法滞在外国人の摘発が積極的に行われた結果、彼らは大都市近郊に拡散していった。10年以上経ち、そうした地域にはすでに外国人コミュニティができあがっている。
失踪外国人は、不法滞在者がすでに生活基盤を築いたこれらの地域に赴き、同胞のよしみで住居や仕事を得ているのだろう。
今後、地方でこうしたコミュニティが拡大していくと、治外法権エリアが生まれることが懸念される。今でも池袋駅北口の新中華街では不法滞在者が多く生活しているといわれている。かつて私が現役の警察官だったころは新中華街を歩きながら北京語で実態把握に努めたが、今も日本語を話せない店員が多く、警察が犯罪の端緒をつかむのさえ困難だ。
不法滞在者を主な客としている飲食店などでは何か問題が起こっても110番通報せず同国人暴力組織で解決する。以前は日本の暴力団の世話になっていたようだが、暴対法をきっかけに暴力団から介入を断られるケースも出てきた。そのため、警察が暴力団から情報を収集することもままならない。警察は、そうした店に足を踏み入れることさえ困難になりつつある。