片山:昔の東映ヤクザ映画みたいな話ですね。新興ヤクザや愚連隊は挨拶が足りないとすぐ潰される(笑)。通貨発行権と挨拶不足で、堀江さんたちは表舞台から退場させられてしまった。彼らが逮捕された結果、金融資本主義という新時代の経験が不十分なまま、日本は次の時代に向かわざるをえなくなった。
佐藤:2人には決定的な違いがありました。村上氏は一審でインサイダー取引で実刑を言い渡されたあと、NPOへの協力やボランティア活動にいそしんで国家の温情にすがった。結果、二審で執行猶予がついた。
片山:国家権力の恐ろしさを知っていたんですね。
佐藤:村上氏はもともと通産省の役人でしたからね。一方の堀江さんはモヒカンで出頭して国家権力を挑発した。だから彼は、特に厳しいと言われる須坂(長野刑務所)に収監された。須坂には現役のヤクザもいる。夏は気温36.7度で、冬はマイナス。もちろん冷暖房はなし。彼の公判態度を見て国家の裁量で重い懲罰を加えたわけです。
●かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究家。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『近代天皇論』(島薗進氏との共著)。
●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。共著に『新・リーダー論』『あぶない一神教』など。本誌連載5年分の論考をまとめた『世界観』(小学館新書)が発売中。
※SAPIO 2017年11・12月号