折しもニュージーランドでは諜報機関である保安情報局が、その外国語学院の卒業生をスパイ容疑で捜査している最中だ。ニュージーランド国民党の国会議員である楊健は中国江西省出身。修士号を洛陽外国語学院で取得しオークランド大学で教鞭を執った。ニュージーランドに帰化して政界に転じた人物がスパイだとしたら、筋金入りだ。人民解放軍の回し者が国会議員だというところに背筋が寒くなる。
日本にとっても対岸の火事ではない。2015年、同学院出身の中国人が大阪府警に逮捕されているのだ(*2)。
【*2:2015年3月、長男の外国人登録を虚偽申請したとする外国人登録法違反容疑などで大阪府警外事課に逮捕された。】
男は軍事転用が可能な技術を持つ機械工業メーカーなど複数の日本企業関係者と接触。諜報機関を傘下に持つ軍総参謀部と定期的に連絡を取り合っていたという。私の隣の王小姐も洛陽で日本語を身につけたスパイかもしれない。
◆静かなる接近の後に…
彼女が達者な日本語で尋ねてきたのは日本の政治や外交政策についてだった。私が彼女と出会った6年前の日本は民主党政権の時代だった。発足したばかりの野田佳彦政権はTPP参加を検討。彼女も日本がTPPに入るのかという点に強い興味を抱いていた。
TPPはその経済効果もさることながら、地政学的には日本とアメリカがアジア太平洋の中小国を引き連れて中国を封じ込めることを意味する。一帯一路とAIIBを掲げることになる習近平政権はまだ発足していなかったが、TPPは中国にとって危険だという嗅覚は王小姐にも充分働いていた。