ビジネス

東芝元社長、西田厚聰氏の死にサラリーマン社会の終焉を見る

10月にロングインタビューを受けた西田氏

 かつてスター経営者と称えられた男はやがて「戦犯」と謗られ、名誉を回復することなく世を去った。12月8日に急逝した東芝元社長、西田厚聰(あつとし)氏のラストインタビューを行なったジャーナリスト・児玉博氏は、彼の死にもう一つの「終焉」を見る。日本が築き上げてきたサラリーマン社会の、完全なる幕引きである。児玉氏が綴る。(文中敬称略)

 * * *
“痛ましい戦死”──西田の訃報に接し、脳裏に浮かんだのがこの言葉だった。と同時に11月15日に上梓した『テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅』のためのロングインタビューに応じてくれた時の光景が甦った。

 6月24日に生死の境を彷徨った9時間にも及んだ胆管癌の手術。そして、3か月以上にも及んだ入院生活。ロングインタビューを奇跡的に受けてくれた西田は、かつての浅黒くエネルギーが横溢する精悍な姿とはほど遠い、顔色といえば紙のように白く、15キロ近く痩せたその姿は、痛々しかった。

 それでもインタビューが始まるや、西田の歯切れの良さはかつてのそれを彷彿させた。「3時間程度ならば(インタビューを)受けますよ」とメールで言って来たように、少々疲れた風情は見せたものの西田の気力には目を見張るものがあった。

 その生い立ちからイラン人の糟糠の妻との出会い、学問を捨て実業の世界に飛び込み、そして名門東芝の社長に駆け上がるまで、西田は淀むことがなく、答えてくれた。今にして思えば西田との3時間余りの対話は、遺言状を聞き取る作業だったのかもしれない。ただしその遺言は“苦い”思いが残るそれではあったが……。

 西田は異端の経営者と呼ばれた。異端と評されるには十分なほど、彼の履歴書は規格外だった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン