芸能

視聴率ひと桁『明日の約束』の満足度が高かったのはなぜか

井上真央がスクールカウンセラーを演じた(番組公式HPより)

 最近のドラマの出来不出来は視聴率だけでは計りにくくなっている。今クールの中で、“ギャップ”が大きかった作品について、作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 19日火曜日に最終回を迎えた『明日の約束』(フジテレビ系)。井上真央さんがスクールカウンセラー・藍沢日向を演じた話題のドラマです。

 男子生徒が不可解な自殺をし、その理由を追いかけていくと友人とのトラブル、モンスターペアレント、過干渉な“毒親”、なりすましメール、DV……思わぬ闇が次々に見えてくる緊迫感に包まれたドラマ。視聴率はひと桁台が続き、その点から言うと「失敗作」に括られてしまうのかもしれません。

 しかし、毎日2400人からテレビ番組の満足度調査を行なっている「テレビウォッチャー」の調査結果は対象的。 F1層(20歳~34歳女性)の平均満足度は突出して高く、物語の半ばあたりで4.15を記録しました。ちなみに高満足度の基準数値は3.7。それを大幅に上回っただけでなく、回が進むごとに女性のみならず男性を含めた満足度が上昇し、第7話で4.00という結果に。他のドラマで4.00を超えていたのは『陸王』『コウノドリ』『ドクターX』『刑事ゆがみ』の4つのみ(12/5日時点)。

 いったいなぜ、『明日の約束』はそれほど満足度が高かったのか? 理由はどこにあるのでしょう?

 このドラマは、ミステリアスな設定であっても、「犯人探し」「謎解き」エンタテインメントではありませんでした。日常の中で誰もが遭遇するかもしれない人間関係の軋轢、本人にとって大きな苦しみとなる出来事、そうしたものに丁寧に寄り添い向き合った。物語を単純化したり面白おかしく誇張せず、淡々と細かく複雑に描き続けた。

 主人公の日向も、物語の進行を解説していく傍観者ではありませんでした。母との依存関係に苦悩している当事者でした。このドラマに登場するすべての人が、いわば当事者だったのです。

 息子を自殺させてしまった母の苦しみ。自殺しなければならなかった息子の苦しみ。幼なじみの苦しみ。同じ部の生徒たちの苦悩。クラスメイトの苦悩。担当教員の苦悩。兄弟姉妹の苦悩……。すべての人々が、それぞれ形の違う苦しみを抱えていた。生きようと出口を模索していた。そして、ドラマを見ている私たちもまた、同様なのでしょう。

 人は解決策を探そうとする時、参照対象があると助かります。自分と似たようなモデルを見つつ、自分なりの方法を考えたい。人間関係の解決の糸口を探す手立てが欲しい、といったニーズがある。

『明日の約束』が、そうした役割の一端を果したからこそ、高い満足度につながったのではないでしょうか? いわば、身近な問題を共に考えるための的確な素材となった。その意味でドキュメンタリーとフィクションの新たな融合の形、と言えるかもしません。

関連記事

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン