ライフ

【鴻巣友季子氏選】2018年に読みたい「さりげないLGBT」

松浦理英子・著『最愛の子ども』

 年末年始はじっくりと本を読む良いチャンス。『週刊ポスト』の書評委員が選ぶ書は何か? 翻訳家の鴻巣友季子氏は、“さりげない”LGBTを知る本として、『最愛の子ども』(松浦理英子・著/文藝春秋/1700円+税)を推す。鴻巣氏が同書について解説する。

 * * *
 最近、SNSで話題の動画がある。ニュージーランドの議員が同性婚反対論者を説得する、実にユーモアの利いた弁論で、彼はこう言う。「いいですか、愛しあう二人に結婚を認めるだけです。あなた方の生活は何も変わらない。明日も陽は昇り、生意気な娘さんには口答えされます。一方、彼らには限りない利点がある」

 なぜ性的多数者は少数者の法的権利を認めることに難色を示すのか。そのことへの違和感をさりげなく表現した小説がこの一年ほど目立つ。それらの作品は「LGBT」を正面切って論じたりせず、むしろ問題化しないことに、問題意識の提起があると言えるだろう。

 保守派政治家たちが「LGBTも暮らしやすい社会を」と、実行する気のない公約を掲げる一方、文学者らは「LGBTが良いの悪いの言うこと自体がどうかしている、それは自然にあるものだ」と、静かな矜持をもって語りかけているようだ。

 芥川賞を受賞した沼田真佑の『影裏』でも、ある男性の元恋人が男性であり、いまは女性に性転換しているということが、急にわかる。すると、今まで見えていた絵が微妙に陰影を深める。野間文芸新人賞を受けた高橋弘希の『日曜日の人々』は自殺志望者の自助組織を描いているが、同性愛者の存在が一つのキーとなっている。さらに、川上弘美の日常SF『森へ行きましょう』でも、高校生の淡い恋愛の先に意外な展開が待つ。

関連記事

トピックス

第1子を出産した真美子さんと大谷(/時事通信フォト)
《母と2人で異国の子育て》真美子さんを支える「幼少期から大好きだったディズニーソング」…セーラームーン並みにテンションがアガる好きな曲「大谷に“布教”したんじゃ?」
NEWSポストセブン
俳優・北村総一朗さん
《今年90歳の『踊る大捜査線』湾岸署署長》俳優・北村総一朗が語った22歳年下夫人への感謝「人生最大の不幸が戦争体験なら、人生最大の幸せは妻と出会ったこと」
NEWSポストセブン
コムズ被告主催のパーティーにはジャスティン・ビーバーも参加していた(Getty Images)
《米セレブの性パーティー“フリーク・オフ”に新展開》“シャスティン・ビーバー被害者説”を関係者が否定、〈まるで40代〉に激変も口を閉ざしていたワケ【ディディ事件】
NEWSポストセブン
漫才賞レース『THE SECOND』で躍動(c)フジテレビ
「お、お、おさむちゃんでーす!」漫才ブームから40年超で再爆発「ザ・ぼんち」の凄さ ノンスタ石田「名前を言っただけで笑いを取れる芸人なんて他にどれだけいます?」
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
1泊2日の日程で石川県七尾市と志賀町をご訪問(2025年5月19日、撮影/JMPA)
《1泊2日で石川県へ》愛子さま、被災地ご訪問はパンツルック 「ホワイト」と「ブラック」の使い分けで見せた2つの大人コーデ
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《美女をあてがうスカウトの“恐ろしい手練手管”》有名国立大学に通う小西木菜容疑者(21)が“薬物漬けパーティー”に堕ちるまで〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者と逮捕〉
NEWSポストセブン
江夏豊氏が認める歴代阪神の名投手は誰か
江夏豊氏が選出する「歴代阪神の名投手10人」 レジェンドから個性派まで…甲子園のヤジに潰されなかった“なにくそという気概”を持った男たち
週刊ポスト
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さま、筑波大学で“バドミントンサークルに加入”情報、100人以上所属の大規模なサークルか 「皇室といえばテニス」のイメージが強いなか「異なる競技を自ら選ばれたそうです」と宮内庁担当記者
週刊ポスト
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン