これらにより、中国は中央アジアやイスラム圏も含めたユーラシア全体を自国の重商主義的な経済システムに取り込んでいくだろう。
第四として、中国は人民元をオイルマネーに変換することによって米ドルを外貨準備金から外し、世界的な金融大国となる。さらに第五として、フィンテック(金融とITの融合)によって、中国は日銀及び連邦準備制度の影響を受けない経済を作り出すのだ。これらの目標が達成されれば、アメリカや日本は中国の属国となるだろう。
これにいかに対処するか。まず、「中国の民主化」に期待して支援するのは単なるファンタジーだ。4000年の歴史を有する中国は、近代史においてアヘン戦争から太平天国、義和団の乱、日本との戦争、そして文化大革命を経ても本質的には変わらなかった。中国が世界の普遍的価値観に則った国に変わることは非現実的だろう。近い未来の民主化などはジョークでしかない。
日本を含めた西側諸国ができることは、中国に法の支配(の概念)を植え付けること。そして、南シナ海での拡大や北朝鮮問題に、日米をはじめ各国で対処していくことだ。また、日本はアメリカに行動してもらうことを待つのではなく、自身の問題として立ち上がり動くことが求められる。
アメリカと日本のエスタブリッシュメントは、中国の強大化を40年にわたり座視してきた。ゆえに現在の状況が生まれている。
アメリカの労働者はエスタブリッシュメントたちよりもこの問題をよく理解していたから、トランプを大統領に選んだ。日本人もまた、自身がなすべきことをよく考えてみてほしい。
【PROFILE】Stephen K. BANNON/1953年11月、米東部バージニア州南東部のノーフォーク市生まれ。1976年にバージニア工科大学を卒業。海軍入隊。ジョージタウン大学でも修士号を取得。海軍除隊後、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。ゴールドマン・サックス勤務を経て1990年に独立し、メディア向けの投資銀行を設立。その後、ニュース・サイト「ブライトバート・ニュース」の運営会社会長に就任。その手腕を見込まれ、トランプ陣営の選挙キャンペーンの責任者に抜擢。
●取材・構成/安田峰俊
※SAPIO2018年1・2月号