「やっぱり、どこかでサボろう、エネルギーをセーブしようとするんです。だから、今回は過去の作品を最初から全部一度見直しました。シリーズものはどうしても馴れ合いみたいなものが生まれがちなんで。『下町ロケット』で一緒だった福澤監督にお願いしたのも、新しいエネルギーをもらって、最初から叩き直したかったからでした」
今回のヒロイン役は、松嶋菜々子。意外にも阿部とは初共演だった。
「てっきりクールな人だと思っていたんです。『家政婦のミタ』のイメージがあって(笑い)。でも、現場で会ってみると、変な気負いもなくソフトで、心から芝居をしてくださる方だった。刑事ものは、直に見合ってやるからウソのお芝居は見えちゃうんです。中にはいるんです、自分が映ってないときに力を抜く人が。でも、松嶋さんは、演技中に心が動いていく様が見えていく女優さんで、本当にやりやすかった」
◆“挫折”もあった若き日々と飛躍まで
本作をはじめ、いまでは途切れなく主演作に恵まれる阿部だが、もちろん順風満帆なだけではなかった。雑誌『メンズノンノ』のモデルとして人気を得ていた阿部が俳優デビューしたのは1987年。が、20代前半の青年は、すぐに挫折を味わう。
「モデルの世界から勘違いしてこっちの世界へ来て、仕事がどんどんなくなり、なんで俺にはオファーがないのかと悩むけど理由がわからない。役者のこだわり、とか言われても、その“こだわり”が何かわからなかったんです」