「守りには入りたくない。だから、いろんな役のオファーを極力断わらないでやっていきたい。2011年に蜷川幸雄さんの演出で、常連の大竹しのぶさんとシェイクスピアを主演でやったときは、これ以上の恐怖はなかった。だけど、そういうのに挑戦しないとたぶん自分が腐っていくと思うんですよ」
「攻める阿部寛」は、脇役さえも受け入れていきたいと言う。
「若い俳優さんたちが凄い芝居をしているので、そういう人たちの主演作品にもぜひ出させていただきたい。30代のときは、主役の人の胸を借りていろんな役をやっていた。思えばあそこに戻るだけなんです。還暦ともなれば年齢的には凄みが出ちゃうかもしれないけど、そこをうまく料理しながら、いい作品を残したい。俺はこれでいいんだ、と安泰の場所には絶対に立ちたくないんです」
【PROFILE】あべ・ひろし/1964年、神奈川県生まれ。モデルを経て、1987年に俳優デビュー。1993年、つかこうへい作・演出の舞台で俳優として脚光を浴び、テレビドラマ、映画に多数出演。2008年に『歩いても歩いても』などで毎日映画コンクール主演男優賞受賞。2012年に『テルマエ・ロマエ』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞。『祈りの幕が下りる時』の後に、『空海―KU-KAI―』『北の桜守』『のみとり侍』の映画公開が控えている
●撮影/二石友希 ●取材・文/一志治夫
※週刊ポスト2018年2月2日号