国内

中学受験「難関私大附属中」の倍率が軒並み上昇している理由

更に狭き門に(写真は早稲田大学)

 2020年に予定されている大学入試改革によって、日本の受験界に激震が走っている。文科省は次世代の日本人に求められる力を「自ら課題を見出し問題を解決する力」とし、高校・大学の教育課程を全面的に見直す。その一環として、現行のマークシート主体のセンター試験が廃止され、新たに「大学入試共通テスト」が導入される。これまでにはなかった記述式のテストが国数で導入され、英語に関しては「聞く」「読む」に加え「話す」「書く」の4技能評価となり、試験の外部委託も予定されている。

 2年後に迫ったこの改革にあたって今、“中学受験”に注目が集まっている。中高一貫校、なかでも難関私大の附属中学校の受験倍率はここ数年、全体的に大きく上昇している。NHKおはよう日本でも取り上げられた中学受験塾を舞台にした漫画作品『二月の勝者-絶対合格の教室-』(小学館ビッグコミックスピリッツ連載)の作者で漫画家の高瀬志帆氏にその理由を聞いた。

 * * *
──中学受験がひと際、熱を帯びてきているように見えます。

高瀬:「大学受験」と聞くと遠い未来に感じるかも知れませんが、現小6生はこの新テスト導入後の世代。決して遠い未来の話ではないのです。既に新テストの記述式問題のモデル問題が公開されており、公立高校でプレテストを実施したところ、ある生徒は「今の学校の授業だけではこの問題は解けない」と。

 高校の3年間だけで、果たしてこの新テストに対策がしきれるのか、という不安に対して、すでに多くの私立中学は、中高一貫の6年間でこの新テストに準備することを表明しています。変革への不安と、一貫教育への期待から、注目が高まっているのではないでしょうか。

──中高一貫校は増加の一途です。

高瀬:ただ、高校募集をやめた学校が増加しています。いわゆる“御三家”も、高校から入れるのは男女6校中開成の1校のみです。私立だけでなく、公立の中高一貫校も増加しており、首都圏に22校あります。親が高校から通っていた母校が、今は中高一貫になっていて高校受験できない、というケースは意外と多いんじゃないでしょうか。親の世代が受験した時代と較べて、選択肢は減っていると思います。

──難関私大の附属中学校の倍率が大きく上昇しています。平均すると4倍から7倍の狭き門と言われています。

高瀬:2015年、文科省は定員を上回る私大への補助金カットの方針を打ち出しました。首都圏に学生が集中している状況を打開するためのものです。2016年から段階的に定員超過数が厳格化されてきており、特に難関私立大学の合格者数はすでに大幅に削減されています。

 早稲田・明治・青学に至っては一昨年(2016年)と前年(2017年)で各2000人超の削減。難関私大全体で1万人超の削減となっています。この合格者数減を受け、大学受験を避け、附属中から入る動きが加速し、その結果難関私学附属校は軒並み倍率が上昇しています。実際に、厳格化が開始された2016年と較べて今年2018年の倍率は、慶應義塾中等部は6.5倍から7.3倍に上昇。明治大学付属中野八王子中学に至っては2.3倍から4.3倍に急上昇しています。難関私大附属中学全体で、平均して1ポイントから1.5ポイント上昇しているのです。

──『二月の勝者』の舞台は中学受験塾ですね。

高瀬:中学受験は、義務教育だけで合格するのはかなり困難です。ほとんどの子どもは4年生から、遅くとも6年生の春から中学受験塾に通います。本書で中学受験塾を舞台にしたのは、中学受験を親子のドラマとしてだけ描くのではなく、それを主に支える塾業界、その職業にスポットを当てたかったからです。

 親が子どもの将来を真剣に考えた結果として中学受験を選んだ事情。そして子どもにとっても自分ごとになってからの真剣な気持ちや努力。それを支える塾。世間一般のイメージとは違い、大人のエゴだけではない、“二月の勝者”となるためのそれぞれの真剣な闘いがそこにあります。

関連キーワード

トピックス

世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン