「同社はもともとプラスチック製造業です。だから製品の外側を作る技術は高い。しかし、中身であるハード面は経験値が少ない。それをカバーするのが、グローバル競争に負けて規模縮小を余儀なくされた大手メーカーをリストラされたエンジニアたちです。アイリスは職を失ったエンジニアを大量に再雇用して技術を手に入れました」(戸井田さん)
しかも、大山社長はエンジニアたちが働きやすい環境を作るため、家電の開発拠点を移した。
「大阪に拠点を置いている大手メーカーが多いため、リストラされたエンジニアたちも大阪界隈に住んでいる人が少なくない。そのため、アイリスの本拠地である仙台の勤務に不安を覚える人は多かった。
そこで大山社長は2013年に大阪に新たな開発拠点を設立した。こうした英断も大山社長のスゴいところ。
アイリスで働くことによって、エンジニアたちは自分の開発した製品が目の前で売れていく感覚を味わうことができる。こうしたことが技術の海外流出の歯止めにもなりました」(関編集局長)
◆ロングセラーにあぐらをかくな
あるインタビューで大山社長は「ロングセラーにあぐらをかくな」と語っている。いくらヒット商品を生み出しても、決して甘んじることなく「年間1000アイテムを新たに開発」するのだという。
「時代とともにニーズは移り変わります。過去の成功にとらわれることなく、常にユーザーインの思想で新たな製品を市場に投入する姿勢こそ大山社長の真骨頂といえる」(関編集局長)
◆奥さんを大切に
日本中の主婦から愛されるアイリス製品を開発する大山社長にとって、いちばん身近な“消費者”は自身の妻だろう。
「昨年、大山社長は旭日重光章を受章しました。1月に祝賀会を開催したのですが、そこで奥様への感謝の言葉を述べて会場を沸かせていました。とても奥様思いなんです」(松下さん)
戸井田さんもこう続ける。
「大阪に開発拠点を移したのもエンジニアたちの奥さんを悲しませないためだったのかもしれませんね。どんなことに関しても主婦目線を忘れないのが大山社長だと思いますよ」
これから大山社長の長男が後任の社長に就任するが、大山社長が築いた“主婦ファースト”の思いがあれば、アイリスオーヤマは主婦から愛され続けるだろう。
※女性セブン2018年3月1日号