馬の重心移動を汲み取れないジョッキーは、焦って速いリズムになるか、遅れたリズムの騎乗になりがちです。すると馬は、自分が思ったほど進めずにしんどくなり、引っかかってしまう。
トップジョッキーは、跨った瞬間に馬の重心の振り幅が分かる。本馬場での返し馬で自分の感触をしっかりと確認している。膝や脚や拳の操作テクニックを総動員させて馬のリズムに合わせる。そういうジョッキーはテン乗りでも問題ない。
大事なのはリズム変換です。
競馬の時の馬の走り(襲歩)のリズムは4拍子。「ダダダダッ、ダダダダッ」という感じです。左手前の場合着地する順は、右の後ろ脚→左後ろ脚→右前脚→左前脚となり、左前脚で地面を蹴った後は、4本すべての脚が空中に浮きます。この際、後ろ脚で蹴る2拍が限りなく1音に近くなる馬もいます。
日本人ジョッキーは、後ろ脚で地面を蹴るときに加速のタイミングを入れる場合がほとんど。しかし、ヨーロッパのジョッキーは少し違う。前脚が着地するときに自らの体重が馬の負担にならないよう、「体重を抜く」という技術を使える。一本調子ではない複雑なリズム変換ができるから、どんなリズムの馬にも合わせられる。そんな鞍上ならば、馬は最後まで脚が止まらず激走する可能性大でしょう。
角居厩舎が新馬戦で減量騎手を起用しないのは、実はそういう理由です。その馬のリズムがどうなのかは、走ってみるまで分からないから、感性の豊かなジョッキーにリズムを確かめて欲しいという意図があります。