秀岳館の快進撃によって、熊本の伝統校・熊本工業も県内を勝ち抜くことに苦心する時代となった。結果として、熊本で公立校を低迷に追いやった鍛治舎に対し、“どの口が言うんだ”という気もしないではない。
「だって、今度は公立校の監督で、立場が違うんだから。秀岳館とはまるで違うことをやる。だから面白い」
◆練習時間は私立の半分
鍛治舎が初めて後輩を指導した2月28日、県岐商を訪ねた。平日でさえ8時間を練習に充てた秀岳館と違い、県岐商では3時間だ。
「パナソニックの監督時代から作ってきた練習のマニュアルを、秀岳館に続き県岐商でも選手に課します。時間は半分になりますが、効率よくやればそれも可能。時間革命ですよ!」
練習は、二人がペアとなって行う手押し車のトレーニングから練習をスタート。打撃練習では狭いグラウンドに5つのケージを並べ、マシンは140キロに設定し、打撃投手には14メートルから放らせた。効率を考えた5箇所バッティングも球速の設定も、鍛治舎の提案だ。
監督就任が決まった2カ月前、県岐商の選手にスポーツテストを課すと30メートル走の最速が「4秒32」だった。秀岳館では最下位に近い記録だったが、初練習では既に3人が4秒を切った。鍛治舎は指導初日の練習後、主将に意見を求めた。その回答にこそ、鍛治舎効果が現れていた。