取材後に数軒ハシゴしても足取りは乱れず


 ダルビッシュ有、田中将大とメジャーを代表する大投手を育て上げた名伯楽の理論を、プロの一流投手たちは一様に認めている。やはり一流同士にしかわからない独特の言語があるのか。

「特別なものなんかない。まず選手の思っていることに応えられるか。それとアドバイスをして選手が納得するかどうか。この2つだけ。どれだけ卓越した理論があっても本人がわかるように話をしないと選手は納得しない。今のコーチは上手く喋れないからな」

 一流になれば持論があり、揺るぎない調整法がある。だがそれでもわからなくなることが絶対に出てくる。そこを即座に察知しアドバイスできるか。それも端的にわかりやすく話し、納得させる技術。それが佐藤にはある。だから皆がこぞって支持するのだ。

「選手には日頃から“勝負”をやって欲しい。負けたくない気持ちはわかるが、それでも賭けて負けることを感じて欲しい。パチンコで1万やっても負ける確率が高いかもしれないけど、ひょっとしたら1000円で出るかもしれない。100円でも200円でもいいから勝負して欲しいんだよな。現役時代、俺たちはいつも勝負していたから、勝負事では絶対に引かない。要は、いざという時に勇気を持って投げられる勝負師になれるかどうかなんだ」

 そう呟き、デヘヘと笑い飛ばして美味しそうに飲む酒はきっと格別な味に違いない。極上の美酒に濡れながら、遠くない夢を見る。それが真骨頂であり、優勝請負人・佐藤義則の宿命でもある──。

●さとう・よしのり/1954年、北海道生まれ。日本大学から1976年ドラフト1位で阪急ブレーブス(現オリックス・バファローズ)に入団。最多勝1回、最優秀防御率1回、通算165勝137敗48セーブ。阪神、日本ハム、楽天、ソフトバンクで投手コーチを務め、全ての球団で優勝。今年から4年ぶりに楽天に復帰。

◆撮影/桜井哲也、取材・文/松永多佳倫

※週刊ポスト2018年4月6日号

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