国内

高齢者施設の人生紙芝居、利用者同士が褒め合うなど好影響

誕生会での人生紙芝居の風景

 のどかな海辺の町、静岡県西伊豆町にあるデイサービス「みんなの家」では、利用者の人生を10枚程度の紙芝居にまとめ、誕生会などにみんなで鑑賞。人生を振り返ることで本人のケアになるほか、作成の過程でご家族や介護スタッフにもよい影響が波及するという。紙芝居を考案したNPO法人みんなの家 ケア主任の奥田真美さんに聞いた。

「10年ほど前、レクリエーションとして紙芝居を取り入れたのですが、一般的な昔話がピンと来ない様子でした」と奥田さん。西伊豆地域には地場産業の花卉(かき=観賞用植物)栽培やかつお漁、かつおぶし作りなどに従事した高齢者が多く、既存の紙芝居にはそのような生活が登場するものはなく、自前で作るしかなかった。

「当時90代でかつお船の船主だった男性が、デイに来られるたびによく昔のことを話してくれたのです。いろいろな漁の話、学校の海洋実習でハワイの小島に行って遭遇した冒険物語などは、私たちも夢中になるほどおもしろくて。でもその人には認知症があり、4世帯同居のご自宅内では少々浮いた存在。幼稚園児のひ孫さんに、世界を股にかけて活躍したひいおじいさんのことを教えてあげたくて、懸案でもあった紙芝居の第1作目にしたのです」

 デイサービス内で披露すると好評で、みんなから称賛された本人も喜んだが、それ以上に本人の家族に喜ばれた。

「紙芝居を複製してご家族に差し上げると、娘さんが“家宝にします”と。お父さんの昔話を耳にする機会はあったと思う。でも忙しい日常、家族は案外、聞き流してしまう。他人だからできたことかもしれません」

 紙芝居作成のための聞き取りは、できるだけ自宅で、アルバムなどを見ながら、家族も一緒に行うという。

「在宅介護では、家族が日々の介護の大変さからイライラしてしまうこともあります。そんな家族が聞き取りの場に同席し、親が寝る間も惜しんで働いていた、子供の服は全部手作りした…と聞くうちに、親の愛情を改めて思い出して心が整理され、新たな気持ちで介護に向き合えることもあるようです」

◆高齢者の人生の歴史を地域の子供たちにも

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン