粛清史を塗り変える異常さについても詳しく描写される。山林緑化やスッポン養殖の失敗、挙句は坐り方が悪いという理由で処刑されるのだからたまったものではない。確かに、人命よりもスッポンの命が大事だと銃殺する金正恩の恐怖政治は、叔母の夫・張成沢の処刑でクーデターの確率を2%から5~10%まで高めたという。
北朝鮮の総兵力は120万といわれるが、そのうち12万が金正恩の身辺警護に当たっているというのだ。こうした人物に核と中長距離ミサイルの所有を許しかねない動きは、長期的視点から見て真の平和につながるのだろうか。まことに読みやすく説得力に富む本である。
※週刊ポスト2018年4月20日号