ライフ

新人漫画賞を審査する現役スター漫画家たちの白熱議論

「第1回次世代マンガ大賞」の審査委員会で議論を交わす現役スター漫画家たち

 新人漫画賞の審査委員会ではどのような議論が行われているのだろうか。漫画誌『ビッグコミックスペリオール』が主催した「第1回次世代マンガ大賞」が、4月13日発売の同誌(4月27日号)誌上で発表された。今回の賞は、定例の新人賞とは異なり、現役スター漫画家たちが審査員となり、大賞賞金は300万円という大規模な賞となった。

 審査員として名を連ねたのは、浅野いにお氏、奥浩哉氏、押見修造氏、花沢健吾氏、柳本光晴氏ら、5人の現役スター漫画家たちと、同誌編集長の菊池一氏。粒ぞろいの新人の力作を前に白熱した審査委員会の様子を、ここに再録しよう。

 * * *
菊池:今回の次世代マンガ大賞は、「スペリオール」が創刊30周年を迎え、残念ながら新人があまり育っていないという反省点に立ち、いまさらですが育てていきたいというものです。新人は、基本的には時間をかけて育てていくものなので、一発の賞でどうこうと考えているわけではないですが、第1回ということで、一流の方々に審査していただくことで、今後に繋げていきたいと思っています。

司会:まずは皆さんから総評をいただきたいと思います。

浅野:何をもって「次世代」か考えた時に、現状の雑誌に載っていて違和感がないというのは違うだろうと考えて、完成度が高いこなれた作品よりも、絵が下手とか、構成が雑とかツッコミどころはあるけれども、作家としての気概が感じられるような作品を高く評価しました。

 僕の中では『くるくるくるりん』がズバ抜けて面白かったです。前半と後半でガラっと絵柄が変わりますが、普段の作風がどちらか全然わからなくて。後半の絵柄だったら、今後は興味ないなという感じですが、そういう振り切れ方ができることを評価しました。果たしてこれが大賞にふさわしいかは疑問なんですけれど、僕はいいと思っています。

奥:僕がこれまで審査員をやってきた中でも粒ぞろいで、ちゃんとまとまった作品が多い印象です。『くるくるくるりん』は構成が面白くて、エンターテイメントという意味では一番でしたが、『委員長、草をむしれ』の方が将来性でひとつ抜けて、大賞にふさわしいんじゃないかと思っています。作者の年齢も18歳と若く、絵も魅力的でオリジナリティがあると感じました。

押見:自分が「負けた」と思うポイントがあるかを基準に考えましたが、全面降伏するような作品はなかったです。最高点をつけた『グロウ』は、絵の上手さとか、友情でも愛情でもない、一言で「兄弟愛」というには色々こぼれるものがあるような男性キャラ同士の繋がりが描かれているのにグッときて、「負けたな」と思った。『ひまわり』は、色々な絵のバリエーションがある中で、ラフだけれど上手い人だなと思いました。

花沢:僕も「次世代」ということを重点に選んだら、『委員長、草をむしれ』と『ひまわり』がいちばん伸びしろがあるんじゃないかなと。単純に年齢が若いということだけでも差を感じました。個人的には『行け!稲中卓球部』の古谷実先生の様な才能を発掘できる可能性を期待していたので、そこに至らなかったのは残念なんですけれど、『ひまわり』はどんどん変化して、数年後にはまったく違う絵を描いていそうな期待感もあるので一番高い点を与えました。『委員長、草をむしれ』は非常にバランスがとれていたので、妥当な点かなと思っています。

関連記事

トピックス

前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト