浅野:ちなみに菊池さんは『ひまわり』はどういう評価ですか?
菊池:面白かったですね。ちゃんと人間を見る目線をもっているし、好みなんですけれど、一方で今まで何十年かこういう審査をしていて、残念ながらこのタイプの方には将来性に疑問もあります。『委員長、草をむしれ』は浅野さんが言われたこともなるほどですが、絵が上手いのと、うちの雑誌にいい意味で違和感が入るのかなという感じで最高点をつけました。好みでいえば『ひまわり』のほうですけれど、まあ編集部としての視点というか。
浅野:僕も雑誌の取り合わせで考えると、『委員長、草をむしれ』はすごく目立つという意味でのよさはあると思います。『ひまわり』は僕も好き嫌いでいうと好きなんですけれど、やっぱり「新人コミック大賞」の審査とかやっていると、十人に一人はこういう人がいて、一度の応募きりでどこかに消えちゃう。この人に三〇〇万円あげちゃって、このノリで連載してみろっていうのもひとつの賭けかなと思うんですよね。単行本1冊分でも描かせて、それがどういう評価になるのかは気になります。『くるくるくるりん』に関してはすぐ商品になる。このまま本にして出せば、そんなに売れないかも知れないけれど。『グロウ』は技術的にはなにも言う事はなくて、僕の点数が低いのはBL感が強すぎたから。そういうのが好きな人であれば他になにも問題がない。
花沢:BL雑誌に載ってたら何も問題がないですね。
浅野:『パレーシア』はすごく真面目な漫画ですけれど、今後これ以上のものを描けるようになるのかっていうのがやや疑問。このままこのテンションのものを描き続けるんじゃないかと思っちゃう。
押見:『ひまわり』の人は、筆で描いているからこう見えますけれど、たぶんちゃんと絵の勉強をして描いたらすごく上手い人なんだと思うんですよ。それとストーリーが描けるかどうかっていうのは別の問題ですけれど。
浅野:もしかしたら永遠にこの画のクオリティしか描けない可能性もあるかな…。
押見:そうですね、絵を上手くなろうとしなければこのままかも……。
柳本:丁寧に描こうとする気概が感じられないのが、気になったったんです。僕は!
浅野:この下手さみたいなものが、手抜きなのか本気なのかわざとなのかで、だいぶ変わってくると思うんです。わざと何かやりたいという気持ちがあるなら、それがいい変化になる気もするんですよ。実際、本人に会って目の前で絵を描かせてみないとわからないところがある。
柳本:この絵が「スペリオール」に載ってるのは想像できない(笑)。
◆『委員長、草をむしれ』VS『くるくるくるりん』…あなたならどっちが大賞?
浅野:大賞を獲ったら連載確定というのがこの賞の特徴だと思うので、自分としては『委員長、草をむしれ』を連載という形まで持っていって、どういう結果になるのかは興味あるんですよね。やっぱり最終的に売れるのはスタンダードな王道の部分を持っているものだったりするので、もしかしたら大きく転がっていく可能性がある。逆に『くるくるくるりん』とか『ひまわり』は、一部の人は好きと言うかもしれないけれど、大きくはならないと思うので。