日本は北の核・ミサイル問題のメインプレーヤーではなく、あくまでサブプレーヤーだ。北朝鮮が交渉相手にするのは米中韓の3国であり、日本がしゃしゃり出ても何も解決しない。日本が率先して北朝鮮と関わるべき唯一の課題は、拉致問題である。
そのためにも安倍首相がトランプ大統領に働きかけ、日本が拉致問題と核・ミサイル問題を切り離して対北交渉を行うことへの理解を得たうえで、日米共同で圧力をかけ、直接交渉に持ち込みたい。
朝鮮半島問題は一筋縄ではいかない。日本にとって最も重要なのは北朝鮮外交に巻き込まれないことであり、チャンスが訪れるまで、安倍首相は蚊帳の外で「高みの見物」を決め込めばいい。
【PROFILE】重村智計(しげむら・としみつ)/1945年、中国・遼寧省生まれ。毎日新聞記者としてソウル特派員、ワシントン特派員、論説委員などを歴任。朝鮮半島情勢や米国のアジア政策を専門に研究している。『金正恩が消える日』(朝日新書)、『外交敗北』(講談社刊)など著書多数。
●取材・構成/池田道大
※SAPIO2018年5・6月号