◆なんだ、できたじゃないか
そうした満たされない思いは、すべて充実した人間関係を求めたからこそ生じたものだ。
「孤独から逃れようと他人に多くを期待しても、かえって人付き合いの悩みは増すばかりです。それなら、最初から意識的に“孤独を味方にしよう”と考えたほうが建設的です」
そう提案するのは『弘兼流「ひとり力」で孤独を楽しむ』(PHP研究所)の著書がある漫画家の弘兼憲史氏だ。
「たとえ妻や家族と同居していても、依存するのではなく、ひとりでいる時間を楽しめる力をつける。それを私は“ひとり力”と呼んでいます。
読書や映画鑑賞の時間を作ってもいいですが、私が勧めたいのは厨房に立ってみること。普段包丁を握ったこともない人間が、いきなり手の込んだ料理に挑戦する必要はありません。まずはインスタントラーメンでもいいんです。とりあえず素ラーメンを作ってもいいし、それじゃあ寂しいと思うなら、ネギをちょっと刻んで入れてみるだけでもいい。
慣れてきたらカレーに挑戦する。肉と野菜を炒めて水を加えて煮る。そこに市販のルーを入れれば完成ですからこれも簡単です。ちょっと隠し味を足して、自分流にアレンジするのもいいでしょう。
“僕には料理は無理だ”と頑なに嫌がる人もいますけど、やってみればこれが思いのほか楽しい。自分の好みの味が作れるし、“なーんだ、できたじゃないか”という達成感が大事なんです」