甲状腺がんも前立腺がんと同じく、進行が遅いことで知られている。医師で医療ジャーナリストの富家孝氏がいう。
「他の病気の診療のついでに見つかることが多い。『早く切らないと』と慌てがちですが、甲状腺がんは進行が遅く余命にほとんど影響しないため、まずは経過観察で十分です。甲状腺がんで亡くなる前に他の要因で死亡する可能性のほうがよほど高く、老衰で死亡した人の病理解剖を見ると、甲状腺がんや前立腺がんが3~4割で見つかります」
大きさが1cm以下の甲状腺微小がんのうち、リンパ節転移や周囲への浸潤がないなどの低リスクがんについて、1993年から2011年の間に1235件の症例を検証した隈病院(神戸市)の伊藤康弘医師の研究によると、手術をしないで経過観察しても9割以上は増大・進行しなかった。中でも患者が60歳以上の場合、進行する可能性はさらに低かった(1.6%)。
同研究では、手術した患者は経過観察の患者よりも声帯麻痺や副甲状腺の機能低下のリスクが大きいとも指摘している。
※週刊ポスト2018年6月8日号