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【著者に訊け】原田宗典氏 長編『〆太よ』

 かねて鬱病と闘い、2013年には覚醒剤所持容疑で現行犯逮捕。そして2015年、復帰第一作『メメント・モリ』を上梓した原田氏にとって、本作は設定こそ一部重なるものの、より物語性の強い成長小説となっている。

「これは不良の小説だから賛否両論はあって当然。僕の87歳になる母親も、好きなところもあったけど、嫌いなところもあったと言っていました。その嫌いなところというのも、洋一が中学卒業の日に、マドンナ〈金田香〉に童貞を奪われたりするHな場面のことで、うちは親父がスケベだったから仕方ないんだけどさ。文学は不良の要素がないとつまらないし、健康優良児みたいに無害な小説なんか、読む意味ないじゃない?

 むしろ俺は読み手次第で毒にも薬にもなる方が健康的だと思う。この洋一もクズのわりには物事を真っすぐ見てよく考えているし、真っすぐ曲がってるよね」

 その日、久々に入手した〈天使〉をキメ、〈世界の平和〉について考えながら新宿を歩いていた洋一は、〈キン!〉という金属音に誘われるままバッティングセンターで120kmに挑み、ヒットを連発。そして傍にいた白杖をつく男に〈いい音させてただろう〉〈何やってんだよこんなところで。迷子になったのか〉と声をかけたのが、〆太との最初の会話だった。

 この時、〈迷子じゃないですよ〉と即答した彼の率直さを洋一は気に入り、互いの家を行き来する仲になる。だが永福町の豪邸に住み、父親は闇社会の大物らしい〆太には何かと謎も多く、洋一も自身が麻薬中毒であることは告白できずにいた。

 また大学中退後、西田さんの紹介で裏ビデオの宅配を始めた洋一は、AV女優岡島かおりがあの金田香だと知り、再会を果たす。たまたま〆太の近所に住む香は誰が何と言おうとやはり最高の女だった。

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