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【坪内祐三氏書評】山田稔が仲間や友人を描く絶品の肖像

【書評】『こないだ』山田稔・著/編集工房ノア/2000円+税
【評者】坪内祐三(評論家)

 大隠は市に隠る(本当の隠者は町の中にいる)という言葉がある。そして、かつて、もう四十年以上前、西の富士正晴、東の花田清輝と言われたことがある。それをもじって言えば、今や、西の山田稔、東の小沢信男である。もっとも、富士と花田はかなりのクセ球で知られたが(私のようなファンにはそのクセ球がこたえられなかった)、山田と小沢は抜群のコントロールをほこる投手と言える。

 フランス文学のジャンルに肖像(ポルトレ=私はこの言葉を桑原武夫から教えられた)がある。桑原同様京大系の優れたフランス文学者である山田稔はポルトレの名手だ。描かれるのは同人誌「VIKING」の人びとや「日本小説を読む会」の仲間たち。

 まさに絶品と言えるのは「年来の友杉本秀太郎」を追悼した「『どくだみの花』のことなど」。杉本のエッセイ「どくだみの花」を話題にしながら山田稔はこう書く。「杉本の文章にしてはめずらしく飾り、とくに比喩がほとんどない。私がこの一篇をとくに好むのは、その簡潔さゆえでもある」。「年来の友」だからこその少し辛口の名文だと思う。

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