師匠とは、安易な救いや表面的な回答、慰めを与えてくれるような存在でもない。相手の無知や未熟さゆえ優位に立つような存在ではない。本当の意味で、行く先を照らしてくれる存在である、ということでしょう。
あるいは、一般的に先生とは生徒の持つ可能性や才能、強さを見、評価するのが普通ですが、しかし師匠とは、弟子の才能や強さだけを見るのではありません。弱さや欠如、不十分さを丸ごと受け入れる。見守る。それこそ親の愛。だからこそ師匠と弟子は疑似「親子」です。そう、まさしく弟子とは文字が示すように「子ども」です。
秋風羽織は、弟子・鈴愛の背中を押しました。今に拘泥するのではなく一歩進め、と。豊川悦司が演じた独特な師としての秋風の魅力は、滝壺のような深遠さと清らかさがあり、父のように包み込む愛がありました。
この朝ドラの凄い点は、そんな漫画「道」の思想にまで届こうかという脚本にとどまりません。漫画を諦めた鈴愛が、次回にはサッパリと前を向き100円ショップの店員になっている。喪失の哀しみをじくじくと引っ張らず、まったく違うシチュエーションに主人公を投下してしまう潔さ。正直、こんな朝ドラ見たことない。
いったい鈴愛はどこまで飛んでいってしまうのか? あと約3ヶ月間、目が離せません。こうなったら演出陣も俳優陣も思いっきり、エンジンをふかして欲しいものです。