中居が「五郎さんにとって、秀樹さんはどんな存在の方だったんでしょうか?」と聞くと、野口は「人生、何度か繰り返しても、こういう人には会えないだろうなって思います」と答え、放送翌日にはブログに〈僕と秀樹の事は,中居さんが言う様に「二人にしか分からない間柄」なのかもしれません〉と綴った。
1976年の『日本レコード大賞』で2人同時に歌唱賞を受賞し、壇上で抱き合うに至るまでのVTRを見た後、野口は号泣。「まさか、このVTR見せられると思っていなかったから……」と呟いた。野口が顔を上げると、沈黙していた中居は「五郎さんにしかわからないんです。もう僕はそれで良いと思うんですよね」とそっと一言添えた。
「スタジオにカメラが戻って来て、トークをしなければならない場面ですから、『当時の心境はどうでしたか?』などと聞きたくなるはず。しかし、中居さんは『五郎さんにしかわからない。それで良い』と気持ちを落ち着かせた。すると、野口さんが淀みなく、本音を話し始めた。時代を極めた2人だからこそのやり取りだったと思います」(岡野氏)
野口は中居にこう語った。
「最初(1974年)に秀樹が取って。その時は僕が取ると思っていたんですよ。『甘い生活』が(オリコンで)1位だったんで。そしたら、秀樹だったんで。え?と思って。でも、秀樹は僕の前では気遣ってくれて。その翌年は僕が獲って。『あれ? なんだろう、この物足りなさは』と思っちゃって。その翌年、一緒に獲った時の達成感というのは、きっと2人で抱き合った瞬間だと思うんですよね」
1970年代から時代を駆け抜け、歌謡界を牽引してきた野口の心情を引き出したように、中居の発する一言には重みがある。なぜ、普通なら当時の感情をストレートに聞きたくなる場面で、「五郎さんにしかわからない。それで良い」と言えたのだろうか。岡野氏はこう読み解く。