必殺シリーズには、続く『必殺仕置人』でも密偵役で出演、計四作に同じ役割で出続けた。
「『ぜひとも君は外せないんだ』なんてプロデューサーに言われたんだよ。頑張って小さな役を大きくしたのが認められて、次に繋がるんだから嬉しいよね。
でも、みんなが緒形さんみたいに受けてくれるわけじゃないんだ。緒形さんは新劇役者に理解があったけど、新劇役者ってテレビドラマみたいな雑多な流派の寄り合い所帯では嫌われるんだ。『理屈ばかり言って芝居は面白くねえじゃねえか』って。
藤田まことさんもそっちだった。『喜劇っぽいことをやる、生意気な新劇の若造』という感じで扱われたね。流派の違いなんでしょう。商業畑で育った人って、何か鎧を着ていて、芝居を競うようなところがあるんだ。
でも、努力したよ。情熱傾けてやった。縁の下の力持ちだから目立つ役じゃないんだけど、番組に役立てばと思ったから」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
■撮影/横田紋子
※週刊ポスト2018年8月10日号