この2年前、父を看取ったときと同じ感動だった。翌日、訃報が届いた。不用意に独居中の母にも伝えてしまい気をもんだが、その日の夜遅くに電話をかけてきた。
「お姉さん亡くなったでしょ。若い頃はいろいろあったけど、あたし今ね、悲しい気持ち」
率直な吐露だった。直前の記憶も失ういつもの母ではない。久々に本物の母に会えたような嬉しさと、母が実姉の死をちゃんと受け止めたという安堵で胸がいっぱいだった。あれから4年。母は明るく前向きにボケながら生きている。そして親戚の話になると、「えっ、お姉さん死んだの? いつ? あんなに豪快な人だったのにねぇ」と言って笑わせる。
一緒に笑っているので、心の奥ではわかっているのかとも思う。認知症の妙味だ。
※女性セブン2018年8月16日号