「黄疸は、肝臓から十二指腸までの間の胆管が腫瘍や結石で詰まってしまうことにより起こります。脂っこいものを多く口にする人や、高齢者に多い病気です。70~80代で最も多く診断されます」
長嶋さんの場合、胆汁をためる胆のうの働きが鈍くなり、胆汁をうまく排出できなくなったことで、胆のう内に胆汁が石化した「胆石」ができたという。実は、高齢者の5人に1人は胆石を持っているので、それだけなら「サイレントストーン」と呼ばれ、痛みもなく、重症化もしない。しかし、その胆石が胆のうから転がり出て、「胆管」に詰まると厄介だ。
「胆管に結石が詰まると、まずは腹痛や背中痛、発熱などの症状を起こします。さらに、胆汁が腸の方に流れなくなるので、肝臓にたまってしまいます。肝臓にたまった胆汁の有害な成分の一部が血液に入るため、脳や肝臓といった臓器に悪影響を及ぼします。症状としては、眼球や肌が黄色くなり、全身のかゆみが止まらなくなる。さらに重症化すれば、肝臓の細胞が壊れていき、意識が混濁していきます。
もし10日以上、集中治療を施しても、なかなか黄疸の症状が抑えられなければ、肝臓がかなり弱っている『肝不全』を起こしている可能性もあり、命にかかわる状況といえるでしょう。また、胆管が結石で詰まると細菌が入り込み、『胆管炎』を起こすこともあります。それも命にかかわる危険性があります」(釣田医師)
長嶋さんは7月中旬頃に黄疸の症状が出て、病院に運び込まれたようだ。すぐに緊急処置が施されたものの、少なくとも8月上旬の時点では病状は一進一退を繰り返しているという。
「考えられる原因は処置したはずなのに、なぜか黄疸の症状がおさまらないようです。長嶋さんももう82才ですから、肝臓や胆のう自体の機能も低下しているのかもしれません。なんとか治療の突破口を探している状況です」(前出・長嶋家の知人)
その容体については箝口令が敷かれ、情報はごく一部の人にしか伝えられていない。お見舞いに訪れる人もなく、病室には時折、医師がバタバタと出入りするだけだという。
◆夢は東京五輪の聖火ランナー
長嶋さんの病状について、次女の三奈さんが代表を務める個人事務所・オフィスエヌに問い合わせたが、「何もお話しできません」と言うのみだった。
振り返れば、ミスターはこれまで何度も奇跡を起こしてきた男だ。現役時代の1959年には、プロ野球界初の天覧試合でサヨナラホームランを放った。監督時代の1996年には、首位・広島東洋カープとの最大11.5ゲーム差を逆転してリーグ優勝を果たし、「メークドラマ」が流行語となった。脳梗塞後も、常人離れしたリハビリに励んで驚異的な回復を見せた。