鈴愛の幼なじみ、萩尾律(佐藤健)の母・和子を演じているのが原田知世。和子が心臓に深刻な病を抱えていることが明かされた今週7日、夫・弥一(谷原章介)を前に『この広い野原いっぱい』をピアノで弾き語りました。それが何とも言えない“素朴さ”。ナチュラルで透明な歌声に、「癒やされた」という視聴者が続出。
たしかに、いい意味でプロの歌手とは思えない歌い方には驚かされました。声を張らず、喉も腹も響かせず。ただただ、伝えたいという思いに溢れた実に素朴な歌。これぞ、歌うことの原点ではないでしょうか?
原田さんはご存じ、女優であると同時にCDを何枚も出しているプロの歌手。ですから、どうしたって下手とは思われたくないはず。普通なら歌手としてこのシーンだけは声を張り、安定した音程で歌うことに集中するはず。
しかし和子さんの歌は「うまさ」よりも、深刻な病を抱えた状態で愛しい人に感謝を伝えたい、そのことに重点が置かれた切実なコミュニケーションとなっていたのでした。「上手に見せよう」という要素が感じられないからこそ、余計に、和子さんの気持ちが伝わってきたのです。
50代になっても透明感があり、自然な優しさに包まれた女優・原田知世の恐るべき「ロンダリング力」。混迷した朝ドラ世界の霧が一瞬晴れ、清められたようなシーンでした。
ちなみにロンダリングとは洗浄のこと。マネーロンダリングといえば資金洗浄、脱税や粉飾決算などで得た不正な資金を洗浄し合法的な資金にする手法のことです。
和子さんは深刻な心臓の病で死を意識している、という。とってつけたような展開で、大切な存在感を持つキャラクターが近々消えてしまうとすれば……また元の木阿弥?清浄な空気を作ることができる和子さんは去ってほしくない、そう思うのは私だけでしょうか?