ライフ

【大塚英志氏書評】手塚治虫漫画を思想宣伝の道具にするな

『手塚マンガで憲法九条を読む』/マンガ・手塚治虫 解説・小森陽一

【書評】『手塚マンガで憲法九条を読む』/マンガ・手塚治虫 解説・小森陽一/子どもの未来社/1500円+税
【評者】大塚英志(まんが原作者)

 憲法九条を変えるべきではないという本書の政治的立場にぼくは賛同する。しかし、その上で、本書のようにその学習教材として直截の手塚作品を読ませることには違和を表明する。

 手塚作品は確かに戦争を主題としたものが少なからずある。しかし手塚の表現は、まんががプロパガンダのツールであった歴史からの離脱として立ち上がった。例えば、本書の解説で野上暁が言及した「勝利の日まで」は、手塚の戦争体験の反映としてのみ論じられるがそれは狭い理解だ。

 この作品は大政翼賛会が主導した戦時下のメディアミックス「翼賛一家」の自発的な二次創作として描かれ、同時期の「防空」を題材とした教育映画のまんが版として目論まれている。そのことはいずれ本にまとめるが、「勝利の日まで」は、戦時下の少年である手塚の自主製作の翼賛教材だった。手塚は自身が軍国少年であったことが記された日記も公にしていて、当時の彼が民主主義者であるはずはない。

 当然、そういう少年としてあった手塚を糾弾するのは無意味だ。だからこそ、手塚少年を縛ったものから戦後、彼が自分のまんがを自由な表現として、いかに立ち上げていったのか、その果てに何がどのように生まれたのかを知ることが重要だ。例えば「アトム大使」の初期構想ではアトムはアメリカの大統領の意で戦う戦闘ロボットだった。しかし、完成した作品は和平大使のアトムの物語であった。

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン